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新聞の作り方/「職場の人権」守る取り組みより 石塚直人

酷暑の八月、私は労働問題に浸かって過ごした。前回号で紹介したネット記事の連載で、発足から八年目を迎える研究会「職場の人権」を取り上げたからである。

不当解雇や職場いじめに遭った労働者の支援に取り組む「コミュニティユニオン」や労働問題の研究者が呼びかけて作ったこの研究会は、代表を務める熊沢誠・甲南大学教授(当時)の名前を頼りに、インターネットで見つけた。事務所には昨年夏に初めて訪れ、入会手続きをした。

マクドナルドの残業代不払いを告発

今回の記事化は、残業代不払い裁判を闘う日本マクドナルドの現役店長がここに招かれる予定と知ったのがきっかけだ。一〇万人以上が働く同社は、米国仕込みの労務・商品管理を持ち込み、業界に大きな影響を与えた。一方で、裁判は波紋を広げ、五月にはパート主体の労組「日本マクドナルドユニオン」も旗揚げした。

ていねいな準備でいい記事を

もっとも、私の社の紙面で、マックユニオンの旗揚げは報道されず、七月になって解説面にだけ記事が載った。東京社会部の労働担当記者が交代したばかりで、予備知識の乏しい新任記者がニュース価値を見誤ったらしい。「職場の人権」そのものもほとんど紙面で紹介されていなかったので、この際まとめて両方を、と目論んだ。

記事が正確でわかりやすいものになるかどうかは、準備の深さで決まる。熊沢さんの本は何冊か読んでいたが、図書館で別のを借り、改めて事務所も再訪して新しい資料も持ち帰った。記事は書き進めながら何度も表現を手直しし、この間、家族サービスもお盆の実家帰省もなし。訳書を送っていただいた闘病中の恩師へのお礼も電話で済ませた。

不払い合法化に歯止めを

例会は店長が多忙で来られず、彼を支援してきた東京管理職ユニオンの担当者が報告した。強調したのは、現在、財界の主張を受けて国が「日本版イグゼンプション」(企業に対し、広範な事務系労働者への残業手当支払いを免除する)の法制化に動いており、裁判の勝利がそれを阻止する力になる、ということだ。

恥ずかしいことに、私はそんな動きを知らなかった。どうしてこんな一方的な制度が持ち出されてくるかと言えば、それがつまり米国流のグローバリゼーション。財界とすれば、労働者に支払う残業代は少ない方が望ましいというわけだ。ただ、それは社会全体にとってどんな意味を持つのか。

大企業が軒並み空前の利益を上げる中、日本社会の二分化は激しくなる一方。将来に希望を持てない若者が急増していることは、将来の経済活動を円滑に続けていくという功利的な面だけから見ても恐ろしいことと思うのだが。

(2007/02/19)



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