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グループホームで「個人の暮らし」実現する

共同生活で高まる力、自立の経験をともに

自立ホーム」―南部障がい者解放センターでは二つのグループホームをこう呼んでいます。 自立ホーム「クローバー」には、脳性マヒの男性三人が、「かおりハウス」には、脳性マヒ、筋ジストロフィーの女性四人が暮らしています。

障がいの状況はそれぞれに違いますし、自立経験も一年、五年、…三十年と様々です。今度、施設から退所される方を「クローバー」に新たに受け入れるそうです。「こうしたことは初めてなのでみんなで頑張りたい」とのことでした。 ここでは、入居者どうしで力を高め合っていることが大きな特徴です。自立生活を始めたばかりの障がい者は、先輩から励ましや具体的なアドバイスを受けることができます。また「先輩」障がい者も、後輩の役に立てるということで、自分自身の輝きを増していきます。グループホームの取組二〇年の間に一人暮らしに移られた方もいますし、また新しい人が入居され、「後に続く障がい者が励まされ、『自分もやってみよう』と思えたことが大きい」(砂川純子さん・南部障がい者解放センター・グループホーム事業部)といいます。

みんなで暮らしたらおもろいんちゃう

南部障がい者解放センターは、「大阪青い芝の会」の南部地区の拠点として一九七六年に堺市で事務所を開いたのが始まりです。一九八六年、香ヶ丘に民家を借りて生活の場・作業所として「南部障がい者解放センター」を開所。「家ではできないことをみんなの力でやっていきたい」―そんな思いで「みんなの自立をめざそう」とグループホームへの取組も始めました。

親元で暮らす多くの障がい者にとって「自立」は、「あこがれ」であっても「とても遠い夢」でした。親に介護をゆだねる在宅生活では、食事作り・洗濯・家計などは親がしてしまいます。基本的な生活経験から遠ざけられてきたために、親と離れての生活を当事者自身がなかなかイメージできないのです。

そこでまずそれぞれの生い立ちや不安を話し合ったり、生活交流から始めました。先行しているグループホームの見学・報告会、制度学習会、合宿での宿泊体験等を重ね、自分たちの思いをどう現実化していくのか? 話し合いを続けました。

洗濯機ってどう使うの? 一度包丁を握って大根を切ってみよう―そんな取組から始まり、自分にとって快適な介護とは何なのか? 介護者にそれをどう伝えるのか? そして介護者を安定的に確保する方法まで一つ一つ話し合い、解決を見つけていきました。

八八年に自前で最初のグループホームを開設。自立生活の経験のある人が核になって、「まわりの仲間が一歩でも前に進める条件をいっしょに形作っていきたい」とのスタートでした。

当時は、「小さな施設じゃないのか」といった批判も寄せられたそうです。しかし、急に一人暮らしといっても無理があるけれど、親から離れて自立するステップの一つとして、また介護基盤を共に作る上でもグループホームは有効でした。@「誰一人、入所施設に入らずにすむように」A「差別によって奪われてきたいろいろな経験を取り戻し、親に頼らない生活の機会と力を自分のものにしていくこと」、B「障がいの重い人もみんなが地域で暮らせることを社会的に明らかにし、必要な支援や制度を求め、訴えていくこと」―自立ホームの意味を考え整理してきた想いです。

地域で暮らす実態から制度を求めて

介護の面では、夜間も含め一対一ないし一人の障がい者に二人の介護者が必要な入居者ばかりで、そのやりくりには大変苦労しています。 当初の介護体制は、先行して自立生活してきた経験者が作り上げてきた介護者ネットワークをベースに共同生活が始まりました。障がい当事者が介護ボランティアを見つけて介護者の名簿を増やし、名簿を見て電話しながら明日の介護者を探すという不安定なものでした。

身体障がい者のグループホームに対して国も自治体も助成制度がなく、行政の支援は週二回程度ヘルパーが家事援助に来るくらい。入居者が生活保護を受け他人介護料を活用して介護者の確保を図りました。

自前で始めた取組をもとに、ねばり強く行政に働きかけ、八九年、堺市が独自に身体障がい者のグループホーム制度を発足。初年度一五〇万円の助成を行い、二年目には年額三〇〇万円になりました。大阪府も続いて制度化。まず実態が作られ、制度が後押しするという経過でした。

支援費制度以降はヘルパーの利用量が増えましたが、まだまだ不足の部分はボランタリーなやりくりです。入居前の自活訓練(人によってペースも期間も様々)や介護者研修なども実施してきましたが、それも制度はなく自前の取組です。

「小さな施設」でない各々の「暮らしの場」

四月に障がい者自立支援法が施行され、グループホームの制度も大きく変わります。これについて砂川純子さんの意見を紹介します。 社会は障がい者も含めて色んな人が生きていて当たり前です。自立ホームは、世代も生い立ちも価値観も違う人が、ほどよくいっしょに楽しい生活を送れるという場をめざしています。 障がい者にとっては、自分一人ではできないことや難しいことをはっきりさせて、遠慮なく手伝ってもらえる関係を作っていくことがとても大切です。

自立支援法のグループホーム・ケアホームは知的・精神障がい者を対象とし、身体障がい者は適用外です。私たちは、身体障がい者のグループホームへの助成を要求しています。しかし、この法律が近い将来介護保険と統合されると、対象に含まれたとしても非常に使いにくいものになると予想されます。

一〇月以降、知的のグループホームでも個別に利用していたヘルパーが実質使いがたくなっています。グループホームの制度とホームヘルパーの利用を併せてようやく個々の条件やスタイルに合わせた生活が可能となってきたところです。世話人一人で何人もの障がい者の世話をするとなると、画一的な介護とならざるを得ません。まさに「小さな施設」化するのではないでしょうか?「一人で何人みられるのか」という「効率」面の論議だけでは、危険です。「この時間は特別に支援をつけて何かをしたい」と思う時間に個別支援を得られないのは、基本的人権の侵害だと思います。

(2007/02/20)



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