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東京都知事選からみる変革の処方箋─石塚直人

育てよう 次代を担う若い主権者

統一地方選挙の前半戦が終わった。投票日の八日、私も職場で夜を明かしたが、東京・石原知事が二位以下に大差をつけて圧勝したのには、予期していたこととはいえ心が重くなった。

障がい者や在日外国人らの弱者に口汚い罵りを続けてきたこの男が、昨年秋あたりから「都政の私物化」を批判され、情報公開で知られる浅野・前宮城知事が立候補を表明したときには、「もしや」と思わせるものがあった。週刊誌の野党精神にも期待した。しかし、大阪から見ている限り、選挙戦は一向に盛り上がらず、この日を迎えた。

各紙によると、突然低姿勢になった石原氏の姿に有権者が驚き、「反省しているようだから」と追及を弱めたという。政党との関係や五輪招致をめぐり、浅野氏の姿勢がわかりにくかったとの分析も共通していた。現職とはそれほど強いもの、でもある。

が、それらは総じて一般論であり、浅野氏の敗因はともかく石原氏がなぜ二八〇万票も取ったか、の説明には不十分だ。朝日が翌九日の朝刊に作家・雨宮処凛さんの「(フリーターなどの)弱者がより弱い者(外国人労働者ら)を憎んでしまう不幸な構図がある」とのコメントを入れたのは、担当者の見識を示している。できれば、現状を変えるにはどうすればいいか、の処方箋もほしい。

本来、選挙日まで持続されるべき怒りがなぜ折れてしまうのか。主権者としてどんな社会を作るのか、ろくに考えもせず、「反省しているから許してやって」の甘言に手もなくだまされるのはなぜか。

私自身は、ユネスコ憲章にもあるように、最終的には教育の力を待つほかないと考えている。学校だけでなく、家族や地域社会も含め、若い世代を主権者として育てることだ。おかしいことはおかしいと言える、現状を変えていくことを諦めない、そんな子どもを育てることだ。「子どもの権利条約」に基づき、日の丸・君が代強制とは全く逆ベクトルの教育がなされる必要がある。

注目すべき滋賀県議連

ただ、これは現状では夢に過ぎない。個々にそうした信念で教壇に立っている教師はいるにせよ、大勢には遠く及ばないからだ。その点で、注目すべきは滋賀県議選の結果だろう。新幹線新駅の建設計画をめぐり、凍結論の嘉田知事を支える政治団体「対話」は議席を三倍に増やし、民主・共産と合わせ過半数を確保した。自民は大幅に退潮した。

「対話」候補には、父親が自民県議だった人もいる。単に選挙戦でスローガンを連呼するだけで彼らが勝利できたわけでないことは歴然としている。学者時代の嘉田知事のそれも含め、琵琶湖を守る運動などの長い取り組みがあり、それによって「新駅凍結」は力を保つことができた。推進派の利益誘導にだまされなかった。落下傘候補の浅野氏の周囲に、そうした力のなかったのが惜しい。

(2007/05/01)



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