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新聞の「客観中立」現実には…?─石塚直人

子供が放置される教育三法「改正」

この原稿が読者の目に届く頃、参院選は終わっている。果たして、結果はどうなっているか。 小泉政権の下で社会の格差が一挙に拡大した後、安倍政権はわずか一年足らずで教育基本法を改悪し、国民投票法で「九条抜き」改憲のレールを敷いた。このことが持つ意味は大きい。個人的には与党が大敗し、政権が崩壊することを望みたいが、仮に政権が代わっても、右へ右へと暴走してきた教育や社会の仕組みは簡単には変わらないからだ。

新教育基本法に続き、「改正」学校教育法など教育三法が成立した。教育の目的に愛国心を盛り込み、学校の新たな管理職を制度化し、教員免許の更新制も決まった。「子どもより管理職の方を向いて仕事をする」教師の多い現状は、心ある人たちの間で言い古された嘆き。それが強まるのは必至、というより、そのための法「改正」であったろう。

法成立前後の「サンデー毎日」は、教師が自身の評価を上げるため「単に子どもに国歌を歌わせるだけではなく、楽器演奏もさせるなどの忠勤競争に拍車がかかる」懸念を述べていた。学校現場を掘り下げて取材したことのある記者なら、だれでもわかることで、すでに多くの学校で似た事態が進んでいる。ただ、新聞の紙面で見る限り、教育法案をめぐるこうした見方は乏しかった。

安易な両論併記 危ういきざし

記者が日々の仕事に追われ、しかも異動のサイクルが早いことで、じっくり取材する余裕を持てない事情はよく指摘される。それは確かに事実だが、私はむしろ今の新聞の「客観中立主義」がマイナスの影響を与えているのではないか、との印象を持つ。意見対立がある場合は双方の見方を尊重して、と言いつつ、現実には自分たちも気づかぬまま力の大きい方に肩入れしてしまっている、という点だ。

沖縄戦での「集団自決」をめぐり、文科省が歴史教科書を書き直させた件は典型と言える。軍が集団自決を命じた事実はない、と軍幹部の遺族が裁判を起こしたからといって、それをこれまでの歴史研究の積み上げと「足して二で割る」ような暴論がまかり通るのは、まさに安倍政権だからこそ。厳しく批判すべきなのに、両論併記にとどまる例が多すぎた。さすがに前防衛相の原爆「しょうがない」発言では、正当な怒りが上回った。

教育基本法の問題で政府の主張を批判すると「それは教組の言い分でしょ」と反論して勝ったつもりになる人は、私の社にもいる。自分で物事を考え詰めることをせず、周囲のムードに合わせて行動する人たちが増えたことは、この国の将来を危うくする。

(2007/08/01)



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