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リレーエッセイ「脳性麻痺と酒飲みの言い訳」〜鈴木勉

どこにもない特効薬

ここ数年、二次障がいで緊張や痺れによる痛みがきつくなり、首が痙攣して頭が動き回ったり、食事をする時や喋る時によく口の中や舌を噛むようになった。ひどい時は水を飲む時にも気管に入り、ゲボゲボヒーヒーと空気中で溺れてたりもする。老人食のように液体にも「とろみ」をつけたろかとヨメハンに笑われるくらい、どうしようもない時がある。

こんな時は、酒(とろみ無しよ。笑)を飲み、緊張を和らげている。医者からは緊張を抑える精神安定剤と軽い筋弛緩剤のような薬を処方してもらっている。こんな薬を飲んでいる障がい者の人たちは解っていると思うが、すぐに眠くなる。何もせずに寝てしまう。薬を処方された通りに毎日飲み続けると、ずっと寝とくしかなくなってしまう。そして、その薬はそのうちに効かなくなり、より強い薬を処方してもらうしかない。

これだけ医学が進歩しても脳性麻痺の専門医は少なく、特効薬なんてものはない。脳性麻痺そのものは治せなくても、つらい二次的な症状を和らげる副作用のない方法くらい、誰かが研究してくれてもよさそうなものだけど、ここ数十年の間、大した進歩もないように思う。行き着く先は、強い筋弛緩剤で心臓の筋肉が止まるか、痛み止めのモルヒネで薬中になるか。明るい未来は見えてこない。

だから代わりに酒を飲むのだ。酒は百薬の長。飲めばきつい現実も少しは和らいで見える。毎日でも少量なら良いというやないか。僕が知っている酒飲みで緊張のある障がい者の大半は、「酒は緊張をほぐす薬」とか言いながら飲んでいる。

後はガンダムスーツか……

僕の親父は結構酒を飲む人で肝臓をやられて他界した。その親父の遺伝なのかもしれないが、僕も結構な量の酒を飲む。緊張がきつくなる前は、昼間から酒を飲むことはめったになかったが、二〇年以上中心的に関わってきた作業所から退いてからというもの、引き籠もりに近く、今は緊張を抑えるためにほとんど昼間から飲むようになってしまった。これってアル中か?あまり食欲もなく、少量どころじゃない量の酒を毎日飲んでいた僕を見かねたヨメハンが怒り心頭。「医者に行って肝臓の検査してもらってこいぃぃ」「ゲッ! は、はいぃぃぃ … オロオロ」というわけで検査に行った結果、肝臓のγGTPの数値は基準値の一〇倍。即刻、CTをとられた。結果は酒による脂肪肝…。トホホホ。 

あとは再生医療が急速に進歩し、筋肉からの微量な電気信号を機械に伝えるとかいうガンダムスーツみたいなのが急速に進歩して実用化されるなんていう奇跡が起こるしか、救われる方法はないわな。

ま、それまで酒飲んで待っとこかぁ。ヨメハン曰く「まぁだ飲むんかいぃっ!」

それまで生きてたら、酔っぱらってガンダムスーツで暴れたろ。ガハハハ!

(2008/04/10)



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