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新聞の作り方-夜間中学就学援助打ち切り 石塚直人

橋下知事の財政再建プログラム

大阪府の「財政再建プログラム」を巡る、橋下知事と府議会との攻防が続いている。2880にも上る事業を聖域なしに見直すという荒療治だけに、メディアも様々な視点で報じてきたが、府内に11ある夜間中学校の就学援助打ち切りを全国通しの7月1日付「記者の目」で大きく取り上げたのは「毎日」だった。人権擁護と行政の責務を真正面から論じた姿勢が光る。

夜間中学は、貧困や差別のため学齢期に教育を受けられなかった人たちが対象だ。生徒は中高齢者や外国人が多く、最近では不登校を経た若者も増えている。山田洋次監督の映画「学校」第1作で、生き生きと描かれた姿をご記憶の読者もおられよう。

その前身は1947年、大阪・生野区の「夕間学級」に遡るとされる。「自分も勉強したい」という声を受け、善意の教員が応急的に設けた。55年には全国84校、5200人まで増えた。

義務教育は国の責任

しかし学校教育法には規定がなく、旧文部省が「学齢超過者の就学は通信教育と成人講座で」との姿勢を続けたため、その後は教室の閉鎖が相次ぐ。66年には旧行政管理庁(現総務省)が「違法」だとして廃止を勧告。一方、東京の夜間中学卒業生・高野雅夫さんらによる増設運動はとくに大阪で広がりを見せ、府・市を動かして公立の天王寺夜間中学(69年開校)に結びつく。以来、関西を中心に増え、今では全国で計34校、さらに公立化を目指す自主運営の教室も各地で取り組まれている。

「義務教育を奪われてきた人たちに、権利としての義務教育を保障する」。これが運動の柱であり、大阪では教育行政の側も先進的な役割を果たしてきた。私も以前見学した東生野夜間中学で、高齢の在日コリアン女性らが先生たち手作りの教材で熱心に学ぶ姿に接し、心が熱くなったことを思い出す。

就学援助は、府市が折半して低所得の生徒の通学交通費を補助するもので、71年に制度化された。府は来年度に制度を廃止、今年度分の府負担分1723万円も1割カットする方針だ。

「記者の目」は、守口市立第三中学校夜間学級の生徒代表の「これがなくなれば通学できない生徒が大勢出る」との訴えを引き、「義務教育は国の責任。安易なカットではなく、国に就学援助を求めることもできたはず」と知事に再考を求めた。道路や河川など、国直轄事業への府負担金410億円を不問にした姿勢をも批判した。

新聞が言論機関としての責任を果たした1例だった。

(2008/08/11)



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