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リレーエッセイ「ろう児が日本手話で学べる環境を」〜森本菜穂子

待ち望んでいたろう学校

今年の4月から東京の品川区で、全国で初めて日本手話で授業をする私立ろう学校、明晴学園が開校された。私たちろう者が長い間待ち望んでいた学校である。

その明晴学園に通うろう児も勿論、先生もろう者で、お互い日本手話(ろう者の言語)で会話し合っているのがすごい。ろう児が話す日本手話は大人も顔負けだそうだ。頼もしい。なぜすごいのかというと、第1言語である日本手話で授業を学び、読み書き(日本語)を第2言語として学習しているろう児が言いたい事を大人であるろうの先生と対等に日本手話で話し合えることである。

それ自体、昔私が通っていたろう学校では全く考えられなかったことである。以前述べたと思うが、昔のろう学校といえば、聴覚口話法(少しでも残っている聴力を生かす為口話を教える方法)で、手話を使うことを禁じていた為、ろう児が友達同士で少しでも日本手話で話そうとするなら、すぐ聴者の(聞こえる)先生や親からもビンタを食らわされるし、手を叩かれたのである。両手をひもで縛られて手話が使えないようにするろう学校もあった。それぐらい厳しくて、ろう児が自分の言語である日本手話で授業を受けられるという環境がなかったのである。

ろう教育帰る子どもたち

また当時は、聴者の親にも手話を禁じていたため、口話だけでろう児と会話しようと努力したが結局失敗し、コミュニケーションが不通のまま、ろう児が育ってきた事実がある。

家族の中でも常に一人ぼっちで、それが大人になっても聴者とうまく人間関係をつくることができず、辛い思いをしている事を聴者の親や先生は知っているのだろうか?

明晴学園に通っているろう児の聴者の親たちも、我が子と日本手話で会話したいという思いが強く、学園やろう児から日本手話を学びながら、家でも覚えた日本手話で会話する家族が増えてきているそうだ。私から見ると羨ましい限りである。

ぜひ明晴学園と同じような環境を他のろう学校も見習って作ってほしいと思う。また明晴学園のろう児たちがきっと将来日本のろう教育を変えていくと信じている。

(2008/09/10)



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