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吹田の生き物と人M-吹田の竹 高畠耕一郎

はじめに

竹の種類は、モウソウチクの他にマダケ、ハチク、笹類のヤダケ、メダケ、クマザサ、オカメザサ、チシマザサなどがあります。国内だけでもタケ類14種・ササ類65種(『タケ・ササ図鑑』内村悦三・05年・創森社)があるそうです。

竹は、「木か草か」とよく聞かれます。1年で大きく成長するとその後は大きくならないし、花を咲かせると一斉に枯れてしまうので草の特徴を持っています。しかし、、竹は木のように大きく、死んだ細胞が固くなったものが外側に太くあり何十年も生きています。竹は「草」でも「木でも」なく「竹」であるとしか言いようがありません。

吹田市で多いモウソウチク

吹田市で一番多い竹はモウソウチク(孟宗竹)です。背の高さが12m(4階建ての高さ位)で、太さは大きいもので直径20pにもなります。江戸時代初期の1736年(元文元年)に島津藩が清から輸入したものが全国に拡がったとの説があります。

吹田はタケノコの産地として知られ、戦前は千里周辺の村には150軒を越える生産者がいて「千里名物タケノコ缶詰」をつくる缶詰工場が11軒もあったそうです。(『千里の歴史と伝統V』・1992・(財)大阪府千里センター)

食用のタケノコと、丈夫で弾力もあるので、ざる・かご・すだれ・箸・花器への利用の他に、建築材や農業・漁業の資材として幅広く利用されてきました。そのため、里山では農家の裏や耕作地の周辺などに植栽され、竹林として維持・管理されてきました。しかし現在は、プラスチックや鉄製品が日用品や建築資材に使われるようになり、また安価な外国製タケノコが輸入されるようになったために、利用されることがほとんどなくなりました。

繁殖しすぎて荒れた竹林に

そのために今は竹林が放置されたままになっており、吹田市でもモウソウチクの繁殖が問題になっています。春先に1ヵ月ほどで一気に背が高くなるモウソウチクは、他の植物との競争に勝って生活範囲を広げていきました。このためわずかに残っているコナラやアベマキなどの落葉高木は、日光を求めて背ばかりが高くなり、やせ細った弱々しい木になっています。

特に公共地の竹林は誰も伐採する人がおらず、竹だけが強く繁殖し、他の植物がほとんど生えない状態が続いています。そのため、竹林内が暗くなり、昆虫や野鳥などの生物の種類も少なく、生物の多様性が失われているのです。

最近は、市民の環境ボランティアの方が適正な管理のために竹の伐採をし、林の中を明るくして、小道なども復活させています。おかげで林床にまで光が入るようになり、草類や樹木の芽生えが起こり、多様な生き物が生息できる場所に変わりつつあります。

タケノコについても、個人が勝手に公共地のタケノコを掘ってはいけませんが、毎年生えてくるタケノコを放置するともっと大変なことになります。昔のようにタケノコを採ったり、繁殖しすぎた竹の適正な管理をすることによって、竹林と雑木林が両立し、美しい景観となります。昔の里山のように、いろんな樹木や草が生えることにより、それらを食物としたり住みかにする生き物の数が増えて、豊かな自然環境が創られていくと私は考えています。

(2009/05/15)



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