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検察の暴走止めなかったメディアと裁判所 -石塚直人

大阪地検の証拠改ざんという犯罪

郵便不正事件で元厚労省局長・村木厚子さんを起訴した大阪地検特捜部の主任検事が「証拠品のフロッピーのデータを勝手に書き換えていた」と朝日新聞が報じた(9月21日朝刊)。10年に1度か、それ以上の大特ダネと言えよう。

すべてのメディアが夕刊や昼のニュースで追いかけ、最高検は即日、この検事を逮捕した。10日後には彼の上司だった元特捜部長、元副部長も犯人隠秘容疑で逮捕された。一連の捜査のずさんさも各社の報道で白日の下にさらされた後であり、検察の権威は完全に地に落ちた。

10月12日現在、2人は容疑を否認し、徹底抗戦の構えだ。元部下の供述と2人の主張が真っ向から食い違い、どちらが正しいのかは判然としない。また、これだけ捜査のウソが続いた以上、「元部下の供述なるものも、本人のものかどうか怪しい」と疑う人がいても不思議ではない。

なぜこんな事件が起きたのか、再発防止には何が必要か。各社とも識者による寄稿や座談会で分析を試みている。ただ、登場するのは大半が東京地検特捜部OB。「現場の捜査力の低下」「社会情勢への対応の遅れ」「上の方針に異論を挟みにくい組織風土」などは確かにその通りなのだが、さらに突っ込んだ原因究明や対応策となると抽象論・精神論に傾きがちだ。「関西圏だけで昇進していく人事慣行」の指摘も、強調しすぎては客観性を欠く。

裏金もみ消しで検察の倫理・能力が劣化

日本では、起訴されれば99・9%が有罪になる。検察の捜査に誤りはない、と裁判所が信じ込んでいるに等しく、憲法からみると極めて異常な事態だ。ノンフィクション作家の魚住昭さんは、ウェブマガジン「魚の目」の8月18日特集「元裁判官が語った司法界の現状」で、裁判所と検察の癒着とその背景を詳しく論じている。

同じ特集(4月12日)によれば、検察の劣化は10年あまり前から目立つようになったという。最大のポイントは、年間5億円にも上っていた検察内部の裏金問題を覆い隠す一方、告発しようとした三井環・大阪高検公安部長(当時)を2002年に逮捕したこと。そして、メディアも検察から情報を取れなくなるのを恐れ、この権力犯罪をきちんと批判しなかった。メディアと裁判所が検察の暴走をチェックしないことが傷口を広げさせた。各社の分析もここまで踏み込むべきだと思う。

(2010/11/29)

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