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当事者エッセー:21世紀11年目 -轟広志

模索し続けた十年

遅まきながら新年明けましておめでとうございます。

思えば、私にとっての21世紀は一障がい者として何が出来てどう生きるか?を模索し続けた十年だった気がします。

精神障がいは目では見えにくい障がいです。ですから90年代の十年間は健常者のフリをしてなんとか仕事やアルバイトを続けていました。しかし、そのツケのように99年の丸一年は家から出れない引きこもり状態に陥りました。

2000年の春に、主治医から聞いた地域生活支援センターを訪ねた日から生活は一変します。大げさな言い方ですが、ありのままの自分で居られて、自分のやれる事、やりたい事だけをやれる場所を見つけたのです。

正直、とても楽になりました。私は発病した事や障がい者である事を悔やんだ事はありません。でも、新たな職場やアルバイトで出会った上司や同僚に、最初から明かした事もありませんでした。自ら明かす必要がないように神経を使い振る舞っていたのです。でも、事実を隠すという事が私にとってとても苦しい事だったと今思います。

新世紀になった時、私は行政の保護だけで生活をしていく事を決め、一障がい者として何ができるのか?という生活にシフトする事にしました。振り返れば21世紀を迎えてからの私は、障がい者である自分を認め、楽しんでいた十年と言えるかも知れません。この十年で様々な出会いと別れがありました。このリレーエッセイも大きな出会いの一つです。仲間の急逝も何度となく経験しました。節目の十年目に、母親が世を去りました。十年一昔と言いますが、私自身も家族やまわりの環境も一つ節目を迎えた気がします。

時間は確実に経過

時代が変わったというよりも、時間は確実に経過しています。私の初診の診断書には「精神分裂病」と書かれていましたが、現在は統合失調症です。「病い」から「症状」へと変わっている。誰かが勝手に変えただけと文句も言えますが、病気ではなく症状なんだと考える事もできます。

病気なら完治を目指せます。症状なら把握してコントロールできます。偉そうな事を書きましたが、時間の経過と共に状況も変わっているのです。障がい当事者も変わる必要を感じています。しかし新聞記事で知ったのですが東京都の統合失調症の男性が、体調がおかしいと119番通報しながらも、13病院に受け入れを断わられ、結局は搬送されないまま腸閉塞で亡くなられたそうです。この男性が統合失調症でなければ、治療を受け最悪の事態は免れたでしょう。私はこれからも、一人でも多くの人にこの障がいに対する大きな誤解を解いていきたいと思っています。

(2011/02/10)

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