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吹田の生き物と人41 アサギマダラ 高畠耕一郎

1000キロ超える大移動

アサギマダラというチョウを吹田ではじめて見たのは、紫金山公園の観察会の時でした。大型で薄い水色に茶色が混じった羽の色で、危なっかしくフラフラと飛んでいるように私には見えました。参加していた昆虫少年が、そのチョウを見た瞬間に「アサギマダラだ!」と興奮した様子で捕虫網で捕まえました。簡単に捕まえることができ、そのチョウを手に取ってみると、ごく薄い藍色の優雅で美しい姿でした。吹田市ではなかなか見ることができない珍しいチョウなので、みんなでじっくり観察しました。

このアサギマダラは、日本列島で長距離の渡りをするチョウで知られています。春に種子島・沖縄諸島・南大東島など南方の遠い島から渡って来ます。大阪は通過点で、夏になると、滋賀県比良山で乱舞しています。また、石川・愛知・群馬さらに宮城・山形などの東北の標高1000bから2000bほどの高原地帯を繁殖地としていることもわかっています。そして、秋になると南下し和歌山・高知などを通って沖縄など南へ行き、台湾でも捕獲された記録があります。これらの移動距離は1000`を超え、大移動と言えます。

「渡り」を調べる素敵なアイデア

では、このアサギマダラが大移動していると、どうしてわかるのでしょうか。それは、アサギマダラを捕獲し、チョウの羽に細い油性ペンで「捕獲した人の名前」「年月日」「捕獲場所」の情報を書き込み(マーキング)、そのチョウを放します。その後、どこか別のところで、このマーキングされたアサギマダラを見つけたら「再捕獲」になります。それで、どこから移動してきたか、何日でここまで来たかがわかるのです。それらの集約をしている団体が「アサギマダラを調べる会(大阪市立自然史博物館内)」です。この会は、1981年から再捕獲記録を行い、現在では、毎年600匹以上、再捕獲の記録をしています。

何とロマンのある取り組みでしょうか。自分の見つけた美しいチョウが、放蝶後、どこか遠い見知らぬ土地で再発見される、そこには自分の名前と放蝶した日付が入っていて、誰か見知らぬチョウ好きな人が記録を残してくれるのです。こんな素敵なアイデアを組織的な取り組みにされたのは、当時、大阪市立自然史博物館の学芸員だった故・日浦勇氏でした。これが「大阪のアサギマダラを調べる会」になり、さらに発展して大阪の名前が消え、全国的な取り組みの会になり、今も毎年、多くの方の調査でアサギマダラの行動がわかってきているのです。「アサギマダラを調べる会」の名前でウェブ検索すれば、詳しいことがわかります。

皆さんも今年の秋は、大きな網と細い油性ペンを持って比良山に行き、アサギマダラを捕まえ、記入してから放す取り組みをしませんか。遠く離れた場所で、再び捕獲されるかも知れませんよ。

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