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新聞の作り方 九電社長、謝罪会見のウラ 石塚直人

やらせメール暴露した「赤旗」

九州電力玄界原発(佐賀県)を巡り6月26日に開かれた県民説明会で、九州電力が子会社を含む社員に対し、一般市民を装って再稼働に賛成する意見をメールで会場に送るよう指示していた、と同社の社長が記者会見で発表、謝罪した(7月6日)。

夜勤で出社した夕方、民放テレビの短いニュースに接した第一印象は「何でまた今頃?」だった。よほど重大で動かしようのない証拠を突きつけられない限り、地域経済界のトップである電力会社が自らの非を認めることはあり得ない。いったい何があったのか。

間もなく一部の報道で、「この日の衆院予算委員会で共産党議員がこの問題を追及したため」らしいことがわかった。実は同党の「しんぶん赤旗」が2日の1面トップで報じていたのだが、私は6月末から4日まで長男に会いにフランスに出ていて、知らなかった。

翌朝の朝刊を待たず、全国紙各社とNHKのウェブ版に載った記事を比べてみた。朝日、産経、日経、NHKは、発表と説明会の大要などを紹介しただけで、突然の謝罪会見の背景は全くわからない。最も詳しいのは毎日で、予算委で共産党議員が具体的な指示内容を指摘し、海江田経産相が「事実なら断固とした処置を」と答弁したことを説明。読売は記事の最後で、共産党議員の質問が会見の引き金と示唆した。2日の赤旗報道に触れた社はなかった。

次々と暴露された原発の暗部

朝日(9日)によれば、福岡市にある子会社の社員が6月日に福岡県内の共産党事務所を訪れ、会社からの通知文書も示して「公益に反する行為は会社のためにならないと思い、知人に相談してここに来た」と話したという。

この内部告発者の功績は特筆すべきだろう。社長会見の翌日以降も各社が続報を繰り出し、「九電幹部が知事に献金」「玄界町長の実弟の会社が九電発注の工事を多額受注」など、原発絡みの地元政財界の暗部を暴き出したからだ。東京や関西の紙面ではその一部しか載っていないが、それでも「原発とは何か」を真摯に考える人たちに影響を与えたことは間違いない。日には九電が「組織ぐるみの世論工作で141人が賛成メールを送信」(これらがなければ反対が賛成を上回っていた)との内部調査報告書を出した。

菅首相が掲げた「脱原発」は、原発利権の保持に汲々とする政財界有力者とそれに連なるメディアから総攻撃を受けている。その中で今回、やらせメール事件の報道が健闘している背景には、全国紙各社の取材主体が西部本社社会部であり、現体制維持を本旨としがちな東京本社の思惑が届きにくい事情もあるのかもしれない。どちらが民意を味方につけられるか、脱原発派にとって、これからが正念場となる。

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