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新聞の作り方104:参院選目前に安倍政権批判できぬ大手メディア 石塚直人

参院選の投開票まであと1週間。自民圧勝が既定のものとされ、選挙戦は盛り上がりを欠いている。NHKや民放も含め、東京政治部を軸とする大手メディアの限界はますますはっきりしてきた。権力を監視するより、勝ち馬に乗るかのような記事が目立つ。

典型的なのが、アベノミクスの評価だ。株高・円安で大企業の業績は好転しているものの、その恩恵は国内で圧倒的多数を占める中小企業にも、雇用や賃金にも届いていない。円安による食料品の値上げなどマイナスも出てきているのに、これらは記事の最後にひとこと添えられるだけ。原発や基地問題をめぐる自民のあからさまな「争点隠し」への批判もほとんどない。

東京で書かれる記事がこれほど政権・大企業寄りになることの背景には、記者クラブに頼る取材システムがある。ふだんつき合っている相手に何となく親しみを感じ、感覚が似てくるのは人の常。地方紙の社説で消費税増税やTPPへの賛成が皆無なのは、地方の疲弊した現実が嫌でも見えることに加え、中央官僚や大企業幹部とつき合う記者がほとんどいないから、と言うこともできる。

だから、という訳か、全国紙で読み応えのある記事は中面に多い。文化部や生活部の記者は記者クラブと関係なく、自分でテーマを決めて取材する。誰にインタビューするかも含めて、記者の知性や創意が問われるのだ。

被害者意識をあおる政治家

さすがと思わせるのは、朝日の「オピニオン」面だろう。7月13日は拉致被害者家族会の重鎮だった蓮池透さんの「被害者だから何を言っても許される、という時期が私にもあった」「政治家は被害者意識を抑えるべきなのに、むしろあおっている」との長文のインタビューをトップにした。毎日も同じ日、ノンフィクション作家保阪正康さんの寄稿を載せ、16年にわたる「昭和史講座」を通じて知り合った多くの戦争体験者の証言のいくつかを紹介した。ともに今回の選挙に当たり、忘れてはならない判断材料を示したと言える。

週刊ポスト「『共産党に1票』は政治的劇薬か悪魔の選択か」(同12日号)は、ある意味で今の政治メディアを象徴する記事かもしれない。6月の東京都議選で同党が野党第一党となったことに「言いようのない違和感」を覚えるとし、同党の健闘ぶりや他の野党のだらしなさを指摘しつつ「中央集権的で裏表のある体質は簡単に受け入れられるものではない」とも書いている。

野党精神が旺盛な同誌でさえ、共産党に対してだけは冷戦時代と変わらない感覚で「主張は理解できるがやはり不安」と繰り返すことに、改めて驚く。私自身、同党の弱点や欠点は体験から熟知しているつもりだが、それでも今の政治状況で自民と共産のどちらを選ぶかと聞かれれば、答えは明らかだ。「戦争のできる国」も貧富の格差拡大も原発輸出も許せない以上、「この際、みんなで劇薬を」と呼びかけるべきではなかったろうか。

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